なりっぱなしの電話。ざわざわと話し合い、時に叫び合う人々の声。
 昨夜の『ジョーカー』追跡から、容疑者転落での終幕。マスコミ対応、検死結果、犯人の身元確認など警察署に詰める人々は夜通し作業に追われており、朝を迎えても休める気配がない。
 キルアも『ジョーカー』の最期を見届けた人物として参考に話を聞かれる場面もあったが、それ以降特に何もすることはなく、ただ人々の忙しそうに行き交う姿を眺めているだけだ。
 しかし、流石にホテルに戻る気にはなれない。


(くっそ・・・ゴンのヤツ、一体どこで何やってんだ・・・)
 不安と心配が苛々を募らせ、キルアはベンチに片膝を立てて座り、親指の爪を噛む。
 ゴンが帰ってこない、連絡もない。


 ゴンは十分に強い。信頼している。だが、こんな異様な状況下で姿を消されると、何があったのかキルアは不安で仕方がない。
 厭な、胸騒ぎがする。
 キルアは顔をしかめて唇を噛み締める。


 『ジョーカー』の名を冠する殺人鬼。消息不明のヒソカ。何かが繋がっていそうで、キルアは歯痒い気持に陥る。敵が見えない中で、ゴンと連絡が取れない状態はキルアにとって言いようのない不安や焦燥感を駆り立てる。もしかしたら、ひょっとしたら、と不安の端々にヒソカの影がちらついてしまう。それが、キルアにとってたまらなく嫌なのだ。ゴンの身に何かあったのかもしれない、と思うと同時にヒソカを連想してしまうこと自体が。


 そこで、待ちに待っていた電話が鳴り、発信者を確かめると同時に瞬時に電話に出るキルア。
 開口一番、重厚な警察署の建物を揺らすほどの勢いで怒鳴りつける。
「てめえぇぇーー!! どこで何やってんだ、ゴンっっ!!」
 一瞬、周囲のざわつきがピタリと止み、大人たちは一斉にキルアを振り返る。
 電話の向こうでは、弱った笑みを浮かべている風のゴンが「キルア、ごめん・・・」とか細く謝る声が小さく伝わってくる。
「ゴメンじゃねぇよ! 一体、どこに居るんだよ!?」
「うん、それがね・・・」







 驚き、息を呑みながらも、一通りゴンの現状についての説明を受けたところで、キルアは不機嫌な顔をして尋ねる。
「・・・で?」
「で、って・・・どうしたら良いかな、って思って相談してるんだけど・・・」
 呑気なゴンの調子に、キルアは再び激昂して怒鳴りつける。
「馬・鹿・か! おめーはよ! そんな、あからさまな罠、迷う余地もないだろ! クロロなんてヤバいヤツ、絶対相手にすんな! 良いから早く帰って来い!」
 まるで、まだ友達と遊んでいたがる子供を叱り諭す母親のような調子で言うキルア。その実、本当はゴンが自分の側に居ないことが不安なだけなのかもしれないが。


「でも、クラピカのこともあるし・・・クロロを見張る意味でも・・・」
「オレらが余計なことする必要もないだろ! アイツはアイツで策があるようなことも言ってたし、逆にお前の所為で迷惑掛かったらどーすんだよ!?」
「う゛・・・」
 キルアの言葉で詰まるゴン。
 ここで、素直に折れて帰ってきてくれれば良いのだが、とキルアは願う。


 実に巧妙な罠だとキルアは思う。麻薬とマフィアの駆逐など、いかにもゴンが好きそうな話だ。ゴンの中にあるお綺麗なヒロイズムにつけ込む、甘い罠。それに加えて、クロロが何を企んでいるのかわからない分、それを暴く為に、罠だとわかっていながらも敢えて自ら飛び込みたい気持がゴンにはあるのだという事も、キルアにはよくわかる。


(でも・・・ダメだ、ゴン! 絶対に、旅団は相手にしちゃダメだ! 下手を打つと、死ぬより酷い目に遭いかねない・・・!)


 父親の警告もあるが、何より、ヨークシンで対峙した時の印象がキルアの本能にそう告げる。旅団――――特に、中でもあのクロロという男だけは、絶対にヤバい。そんなヤツと、仲良く二人で悪党退治など、正気の沙汰ではない。


「・・・ねえ、ところでさ! 『ジョーカー』が死んだって本当なの?」
 キルアの考えは十分わかった、という具合に話を切り替えて、ゴンは尋ねる。
 キルアは渋い顔を浮かべて「・・・ああ」と低い声で返事をした。
「オレが追っかけようとした途端に、ビルの屋上から落ちた。でもあれは、落ちたって言うより、自分から飛び降りた、って感じだった」
「・・・どんなヤツだったの?」
「スーツにピエロの面を被った男。顔とかは全然わからない。頭から落ちたから全部グチャグチャだ」
 今、鑑識で身元確認中、とキルアは付け足す。ふぅん、と納得のいかぬ調子で呟くゴン。
「・・・変だね」
「変だよ。そいつが本当に『ジョーカー』なのかどうか、誰も判断できない」


 流石にリンドン市警も馬鹿ではないだろうから、物的証拠なく、状況のみで容疑者を即『ジョーカー』として、死亡のまま逮捕という幕切れでは終わらないだろうが、このまま『ジョーカー』による犯行が止めば、昨夜死んだ男が犯人だったと結論付けざるを得ない。
 複数犯による足切りか、本当の犯人の存在を隠すためのカモフラージュか、とにかく昨夜のピエロの面の男については、事件の根の深い部分まで捜査が辿り着けぬよう、切り捨てられた犠牲者のようにもキルアは感じる。


 だが、問題なのはタイミングだ。
 ゴンとキルアがこの街を訪れたと同時に、死んだ『ジョーカー』。
 まるで、用済みだと言わんばかりに。
 一体、何の『用』が済んだと言うのか。


(『ジョーカー』の・・・黒幕の本当の目的は・・・まさか・・・?)
 『ジョーカー』捕獲の指令は、ゴンの携帯に掛かってきた。相手はハンター協会の人間だったが、電話でのやり取りなどあてにはならない――――否、その後送られてきたメールや資料は確かに協会からのもので、セキュリティの厳重さもプロのハンターでなければ扱えない類の送信方法だったはず。


 キルアは、厭な予感を抱えながら必死に考えを巡らせている。最悪の事態を想定しておく用心深い心と、そんなことありはしないと楽観視していたい気持がせめぎ合う。
 『ジョーカー』捕獲の為にこの街を訪れたゴンとキルア。その日に片付けられた『ジョーカー』。そして、時を同じくして現れた――――クロロ。そのクロロは今、ゴンを柔らかく捕らえている。


(まさか・・・クロロが?)
 証拠は何ひとつない。タイミングから推測されるただの可能性のひとつに過ぎない。
 だが、もしこの推論が本当だったとしたらと思うと、キルアは腹の底からどす黒い不安が湧き起こるのを止められない。


「とにかくっ! ゴン、絶対ダメだからな! クロロを手伝うなんて危険すぎる! 絶対、今すぐ帰って来いよ!!」
 不安を拭うようにキルアはゴンに再度、警告する。電話の向こうのゴンは、キルアの心中など知らずに、不貞腐れた様子で「・・・うん」と渋々といった返事を寄越した。
 『ジョーカー』について、わかったことがあればまた連絡するから、と言ってキルアは一旦電話を切る。そして、ベンチに深く腰掛け、項垂れて大きく長く溜息を吐いた。


 もし、『ジョーカー』の黒幕がクロロだとしたら。
 その推測と仮定の結論が恐ろしくて、キルアはギリッと唇を噛む。ゴンと連絡がついた安堵感も一気に吹っ飛んでしまう。




 幻影旅団は――――クロロは、盗賊なのだ。
 大切なものを、盗んで、奪っていく。




 『ジョーカー』という存在自体、ゴンを捕らえるために張り巡らされた罠のひとつなのだとしたら? ひょっとしたら、自分たちは既に、知らぬ間に相手の罠の中に居るのかもしれない。そして、ゴンは更に深みに嵌まろうとしている。
 不安が焦燥感を生んで、キルアはそれを振り払うように立ち上がった。


(じっとしてても仕方ないし・・・ゴンを、迎えに行くかな・・・)
 具体的にどこに居るのかはゴン本人にもわかっていなかったようだが、主要な駅などで待ち合わせることくらいはできるはずだ。
 一刻も早く、不安の元凶からゴンを引き離したくて、キルアがゴンにもう一度電話を掛けようとしたその時、ガンッ!! という派手な音が廊下に響いた。


 音のした方向にキルアが視線を向けると、憔悴したブラウンが自動販売機を力任せに蹴りつけた後のようだった。昼間の、穏やかな様子とは一転して、酷く不機嫌そうでやつれてしまっており、先程よりもずっと老け込んでしまったように見えた。
 自分も先ほど、電話口で大声を上げて周囲の注目を集めた身ではあるが、そんなことは完全に棚に上げて、キルアは、おっさん何してんだよ、といい大人が大きな音を立てたことに呆れた気持になる。
 パンツのポケットに手を突っ込んだまま、ふらふらとブラウンに歩み寄り、キルアは生意気な調子で「おっさん、何イラついてんの?」と、心に思った通りの言葉を口にする。
 その声に、ブラウンは生気のない目をキルアに向け、「ああ、キミか・・・」と力なく呟く。


「まったく、上の奴らは何もわかっていない・・・! ただ、突然現れて捜査の網を撹乱しただけの男が、本当の『ジョーカー』のはずなどありはしないのに・・・!」
 悔しそうに歯噛みしながら、ブラウンは独りごちる。その言葉から、キルアは、事件は無理矢理終息に向けられつつあることを察した。
「ふぅん、結局全部、昨日死んだ男が真犯人だった、って事で片付けられちゃいそうなんだ」
 キルアの発した言葉の呑気な口調が気に障ったのか、ギロリと充血した目でブラウンはキルアを睨みつけた。しかしそれは、ただ単に寝ていない為に疲れ切った表情がそう感じさせただけかもしれない。 
「そうだ・・・そうなんだよ・・・あんな、普通の男が『ジョーカー』のはずはないんだ・・・わたしが知っている『ジョーカー』は・・・」
 言葉を区切り、虚空を睨みつけるようにギリと視線を上げるブラウン。




「赤い髪の、道化の化粧をした、恐ろしく冷たい眼の男なんだ・・・!」




(・・・えっ!?)
 ブラウンの言葉に、キルアは思わず息を呑む。
「ちょ・・・待って! それって、一体何の根拠が・・・!?」
 まるで憎しみがこもっているような強い眼で虚空を睨むブラウンの横顔を見上げながら、キルアは慌てて尋ねる。


 今、ブラウンが口にした男の特徴は、まさにヒソカそのものではないかと、キルアは驚き息を呑む。


「それは・・・」
 ブラウンは、言いかけてチラリと周囲の様子を伺った。特にブラウンとキルアの二人に注目している者など居はしないが、何故か人目を憚る様子があり「ちょっと、こっちへ」と、ブラウンは手近にあった会議室を示す。導かれるまま、キルアは素直にブラウンに続いてドアを開いて小さな会議室へと入る。


 長机とパイプ椅子とホワイトボードが置かれた小さくシンプルな部屋。ギギッとパイプ椅子を引いてキルアは腰を下ろす。ブラウンは立ったまま、再び宙を見つめるようにしながらポツポツと語り出した。
「実は・・・二年前にも『ジョーカー』による殺人事件が、このリンドンシティであったんだ」
「二年前・・・?」
 言われて、キルアはなんとはなしにブラウンの右の義手に視線を注ぐ。
 確か、二年前の事件でこうなった、と刑事は言っていなかったか? キルアは先日の話の件を思い出す。


 ブラウンは、キルアの視線に気付いた様子で、無言のまま深く頷く。
「察しの通りだ、キルア君。私の右腕は、その男・・・『ジョーカー』によって切断された」
「・・・! でも・・・なんで、その男が『ジョーカー』だって・・・?」
「そうだな・・・話を順に追って説明しよう。二年前の冬だった。或る日突然、リンドン市内の小中学生14人が姿を消した。学校も、住んでいる地域も、性別も年齢もバラバラだったが、同日に起こった14人もの子供の行方不明事件に警察は慌て、すぐに対策本部を立てて捜査網を敷いた。
 だが、事件は最悪の結果に終わった。翌日、失踪した14人全てが同じ場所で遺体で発見された」
 苦虫を噛み潰したような表情のブラウンは、一呼吸置いて続ける。


「遺体を・・・発見したのは、私たちの部隊だった。酷い・・・有様だったよ。まるでゴミのように積み重ねられた子供たちの死体。本当に・・・むごい・・・」


 そこでブラウンは言葉を詰まらせ、込み上げるものを堪えきれなくなったように目頭を押さえて俯いた。「すまない」と一言短く告げると、キルアから顔を逸らせて暫く肩を震わせていたが、ひとつ大きく深呼吸をすると再びキルアに向き合い言葉を続けた。


「その男は遺体の目の前に佇んでいた。まるで、この遺体の山は自分の作品だ、とも言いたげな様子で。そして・・・恐ろしい、本当に恐ろしいほどの冷たい笑みを浮かべながら、男は鋭利な刃物のようなもので我々の仲間を次々と殺害していった」
 そこで、ブラウンは苦悶の表情で目を閉じる。まるで、二年前の悪夢の様子を脳裏に再現しているかのように。
「男は、一片の躊躇いもなく我々の仲間を切り裂いていったよ。あまりの鮮やかさに、恐怖よりも美しさや見事さを感じてしまうほどだった。そして、ヤツがわたしの腕を切り落とした際に、何かに気付いたようにこう言ったんだ」




『あ、キミは殺しちゃいけないんだった♣』




「月明かりの下、よくよく見れば男が手にしていたものはナイフなどではなく、トランプのカードだった。我々の仲間と、私の腕を切り落としたカードを、子供たちの墓標のように、死体の山に添えて男は去っていった。そのカードの絵は・・・説明するまでもないな」
 そこまで説明を終えて、ブラウンは一旦押し黙った。


 話の内容を反芻し、キルアは不可解な気持に陥る。外見的特徴、トランプによる殺害、墓標として添えられた『ジョーカー』のカード・・・二年前にブラウンの右腕を切断した犯人は、明らかにヒソカとしか思えない。
 だが、二年経った今、何故『ジョーカー』による少女連続殺人事件が起こっているのか。二年前の事件の犯人がヒソカだったとしても、果たして今行われている犯行にヒソカは絡んでいるのか、キルアの疑問は尽きない。


「おっさん・・・二年前のその事件の犯人、ひょっとしたら、オレたちの知ってる奴なのかもしれない」
 神妙な顔で呟くキルアに、ブラウンは「本当か!?」と勢い込んで尋ね返す。しかし、キルアは渋い表情を浮かべたまま首を横に振る。
「オレたちがハンター協会から此処に派遣されたのも、そいつとの繋がりがあるからってことらしいし。繋がり、つっても別に仲間とかじゃなくて・・・まぁ、腐れ縁みたいなもんだけど。知り合ったのも最近だから、二年前のことなんかオレたち知らないけど、とにかく今は・・・そいつは、プロハンターの資格を持ってる」
 プロハンター。その言葉に、ブラウンは苦々しい表情を浮かべる。
「二年前の事件の証拠とかが見つかったところで、実際に罪を実証するのは難しいんじゃない?」
 ライセンスに守られたハンターの罪を暴き、司法にその罰を委ねることなど不可能に近い。弱ったようにキルアが目を上げてブラウンに尋ねると、ブラウンは大きく肩を落として首を振る。


「キルア君・・・そうじゃないんだ・・・二年前の事件は、既に終わってしまったことなんだ」
「え?」
「ハンター協会が君たちに事前に送った資料にも、おそらく二年前の『ジョーカー』事件については何ひとつ触れられていなかったんだろう?」
「あ・・・」
 言われてキルアは思い返す。詳らかに熟読した訳ではないが、ザッと目を通した限り、確かに二年前の事件についてなどは一言も書かれていなかった。
「犯人は、既に検挙されている。事件以前にも婦女暴行などの罪で何度か逮捕歴があった精神異常者の男だ。私が病院に入院している間に、事件は全て片付いてしまっていたよ」
「でも、それって・・・」
 実際の犯人の目撃者であるブラウンの証言など完全に無視の捜査結果。そんな杜撰な事件解決などあり得るのかと、キルアは唖然とする。
 ブラウンは、これでもかというほどに歯を食い縛り、悔しそうな表情を浮かべて左手の拳を握り締めた。


「そうなんだ・・・そうなんだよ! 捜査は全てデタラメ、犯人もでっち上げだ。二年前の『ジョーカー』事件については資料もほとんど残されていない。捜査に立ち会った現場の刑事や鑑識医たちはことごとく左遷され、事件についての詮索を一切禁じられた。一体、何があったのか我々に知る由もないが、上からの圧力が掛かったのは間違いない。おそらく、事件はマフィアと何かしらの関連があったのだと思う。マフィアと繋がりのある上層部が、事件を揉み消し偽の犯人をでっち上げた」


 上層部にマフィアと繋がりを持つ人物が居るなど、どれだけ歪んだ組織なのだとキルアは呆れ果ててしまう。別に、誰がどこで何をしようと勝手ではあるが、仮にも警察組織だ。その正義を頼りに生きている人々を他所に、私服を肥やし地位を守るのに必死な上層部とやらの存在は、ある意味、闇に生きるマフィアたち以下だとキルアは思う。
(ゴンが聞いたら、機嫌悪くなりそうな話だな)
 まっすぐな心を持つ親友を思い、キルアはひとつ、溜息を吐く。


「でも・・・そんな杜撰な捜査で、例えば・・・殺された子供たちの親とか、納得できたわけ?」
 最も哀れなのは、何の罪もなく殺された子供たちではあるが、子を失った親たちの悲しみはどれほどのものかと、キルアは一般的な心情で推察する。


 すると、キルアの言葉に、ブラウンは今までに見せたこともないような怒りの表情を露にして、叫んだ。


「納得なんて・・・できるはず、ないだろうっ・・・!!」
 叫び、握った拳を長机に叩きつけるブラウン。予想外の刑事の反応に、キルアは驚き呆然としてしまう。
 拳を握り締め、怒りに震えながら、ブラウンは再び涙を目に滲ませる。
 そして、呻くように震える声で言葉を搾り出した。


「あの・・・月夜に見た、子供たちの遺体の山の中に・・・わ、わたしの・・・娘が・・・」
 かろうじてそれだけ呟くと、ブラウンは机に突っ伏して肩を震わせ慟哭する。
 その言葉とブラウンの姿に、キルアは息を呑んだ。


(娘を・・・殺されたのか)


 子供を殺され、深い深い悲しみと怒りに、どうしようもなく嘆く親が居る。
 この男から、最愛の娘を奪った殺人鬼『ジョーカー』は――――ヒソカ。
 許せない、などと言う筋合いは自分にはない、とキルアは思う。自身も、同じ穴の狢なのだから。
 だが、ゴンにとっては――――




(お前は、ヒソカを許せるか?)




 子を失った悲しみに嘆く男の姿を見つめながら、キルアはゴンの純粋でまっすぐな瞳を思い出していた。 




















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