ゴンとキルアの、まるで戦場のような盛大な食べっぷりをヒソカはご満悦で眺めていた。
 これだけ気持良く食べてくれると、奢り甲斐もあるというものだ。
 とある街の高級カキン料理店で、ヒソカは二人の子供たちの食事風景を肴にしているかのように紹興酒を嗜んでいた。


 コース料理は次々と円卓に運ばれてくるが、気に入った料理が出てくるとキルアもゴンも「同じのをあと5人前!」などと遠慮なく追加注文を入れている。
 おそらく調理場は、この食事風景以上に戦場と化しているに違いない。


 ちなみにゴンは単純に好きな料理を頼んでいるのだが、キルアに関しては敢えて高額な料理を注文している節がある。
 ヒソカに対してあまり良い感情を抱いていないキルアは「ヒソカの財布ごと食い尽くしてやれ」という心づもりがあるのかもしれない。
 そんなキルアの目論見も可愛いものだとばかりに、ヒソカは愉しそうに眺めていた。


「ヒソカは何も食べないの?」
 口をモグモグと動かしながら不思議そうに尋ねるゴンに、ヒソカは満面の笑みで「キミが美味しそうに食事をする姿を見ているだけで、ボクは幸せで胸がいっぱいだからネ? 遠慮なくお食べ?」と返した。
 傍らでキルアが「うげー」という顔を見せる。


 そんなヒソカとキルアを交互に見て、ゴンは不思議そうに尋ねた。


「ねぇねぇ、変化系の人っておばけとかが怖い人が多いの?」
 突然の質問に、キルアは変な顔をして「・・・一体何の話だよ?」と呟く。
 キルアの質問に、ゴンはキョトンとして「だってね」と返す。


「キルアだけじゃなくて、ヒソカもこの間のホラー映画見て、怖くて一人じゃ眠れなくなっちゃったんだって。変だよね、大人なのに」
 真顔で答えるゴンに、キルアは「はぁ?」と凄みをきかせて聞き返す。


「なんでお前、そんなこと知ってんだよ?」
 非常に不機嫌そうに尋ねるキルアに対し、ゴンはキョトンとしたまま「ヒソカが自分でそう言ったんだよ」と答えた。
 すると横から、ヒソカが嬉しそうに口を挟む。


「ボクがそう言ったら、ゴンが一緒に寝てくれたんだよ?」
 まるで自慢するかのように得意げに言ってのけたヒソカ。
 キルアはそれを聞いてヒソカを、次いでゴンを、信じられない、というように睨みつける。


「何やってんだよお前は!?」
 今にも説教をし始めそうな勢いのキルアに気圧されることなく、ゴンは突然「あっ!」と声を上げて笑顔を見せた。


「そうだ、良いこと思いついた! 二人ともおばけが怖いなら、キルアとヒソカ、二人でいっしょに寝れば良いんじゃ・・・」
「良くねーよ!」
 キーーっと食い気味にツッコミを入れるキルア。
 一方のヒソカは「キルアも悪くないけど、イルミに怒られるのイヤだし、ボクはゴンと一緒の方が良いなぁ?」とのうのうと言ってのけた。
 二人に却下され、ゴンはちぇっと落ち込んだように「なぁんだ、折角良い考えだと思ったのに・・・」とブツブツ言っている。
 そんなゴンに、キルアがぶすっとして告げた。


「それに、オレは別におばけが怖いわけじゃねーよ」
 まるで強がりのように唇を尖らせてキルアは呟く。
「えっ、じゃあ何が怖いの?」
 不思議そうにキルアの顔を覗き込んで尋ねるゴンに、キルアは非常に嫌そうに渋々答えた。


「違くて・・・あの、この間見た映画の・・・テレビから出てくるアレが、怒った時のイル兄によく似てたから、それで・・・」
 少し恥ずかしそうに呟くキルアの答えに、ゴンもヒソカも「あぁ〜」と納得した表情を見せた。


 ヒソカは何度か頷きながら、意地悪な笑みを浮かべてキルアとゴンに告げる。


「それじゃ、キルアはおばけが怖くないって言うけど、ボクは本当に怖いから、ゴンはボクと一緒に寝るべきだよね?」
「ちょっと待て、なんでそうなるんだよ」
 ヒソカの言にキルアが立ち上がり、ギリッと睨みつける。
 キルアの鋭い眼光を、小馬鹿にしたような笑みで受け止めるヒソカ。


 そんな二人の様子を見守るゴンは、オレは一人でも寝られるのになぁ、と場違いなことを思いながら、モリモリと食事の続きを楽しんでいたのだった。