ゴンはへの字口でムスッとしながら壁いっぱいに身体を寄せ、ベッドの半分のスペースをあけた。ゴンの預かり知らぬところで、今晩、ヒソカと一緒に寝る羽目に陥ってしまったからだ。
 ゴンの不機嫌そうな顔は、散々言い合いをした結果だ。


「寝るところが無いならオレが床かソファで寝るよ、ヒソカがベッドを使えばいいじゃん」
 キルアとならともかく、身体の大きなヒソカと一緒に寝るにはこのベッドは狭そうだ。むしろ、ヒソカ一人分であっても多少窮屈に感じるサイズかもしれない。
 そんな思いをしてまで一緒に寝る必要などないとヒソカに抗議したゴンだが、ヒソカは満面の笑みでそれを迎え撃つ。


「怪我をしているゴンをそんな所で寝かせるわけにはいかないな♠」
「・・・だったら、ヒソカが床で寝れば良いじゃん」
 唇を尖らせて不満そうにゴンが呟けば、ヒソカは大仰に傷付いた素振りを見せた。


「ああっ、ゴン♦ キミは命の恩人に向かってそんな冷たいコトを言うのかい? ゴンがそんな冷たい子だなんて思いもしなかったよ!」
 まるで悲劇のヒロインのように手の甲を額に当て嘆くヒソカに、ゴンはただただ渋面を浮かべて「面倒くさいなー」という表情をしていた。
 しかし、さめざめと泣くフリをし続けているヒソカをいい加減鬱陶しく思ったゴンは、「もーわかったよ、ヒソカと一緒で良いよ」と仕方なく告げた。その瞬間、両手で覆ったヒソカの顔がニヤリと妖しく歪んだのは言うまでもない。


 そんな具合にヒソカと一緒に寝ることが決まってしまったゴンは、仏頂面をして壁際に自分の身を寄せてベッドに横たわった。壁の方を向き、ヒソカには背中を向けている状態だ。


 ギシリとベッドの片側が沈む。ヒソカがベッドの上に身体を乗せたようだ。
 と同時に枕がスポンと抜かれ、ゴンの頭がガクンと落ちた。


「な、何するんだよヒソカ! いきなり枕取るなよ!」
 ムッとして振り返るゴンと、満面の笑みのヒソカ。


「だって、枕はひとつしかないんだから、これはボクが使うべきだろ♦」
「なんでだよ! だったらジャンケンで決めればいいじゃん!」
「違う違う、ボクがこっちの枕を使えば、ゴンは、ホラ・・・♥」
 言いながら、ヒソカはゴンから奪った枕を自身が寝る場所にセットして身を横たえ、ゴンの頭の下に腕を伸ばしてやる。


「ボクの腕枕で寝れば良い訳だろ♥」
 フフン、と得意げにゴンを見つめてくるヒソカにゴンはグヌヌと歯噛みをする。ヒソカの笑みになぜか猛烈にイラついたゴンは、勢い良くドスンとヒソカの腕に頭を乗せてやった。
 しかし、それを気に留めるどころかますます嬉しそうに笑みを浮かべたヒソカは「捕まえた♥」と言いながら、ゴンの小さな身体をまるでぬいぐるみのようにギューッと嬉しそうに抱き締める。


「ギャッ! ヒソカ、離せよ何するんだよ!」
 ジタバタ暴れるゴンの身体を更にギュッと抱き締めて「ヤダ♥」と嬉しそうに告げるヒソカ。
「う〜ん、ゴンの身体ってスベスベで柔らかくて気持イイね♥ 腕もおしりもプニプニ♥」
 嬉しそうにそう呟きながら、ヒソカはゴンの身体を撫で回し、太腿やお尻など肉付きの良さそうな部位を大きな掌でさすっていく。
 が、その一言がゴンの逆鱗に触れた。


「オレ、プニプニなんかじゃないよ!!」
 キルアと化物だけにとどまらずヒソカにまで自分の身体の気にしていることを指摘され、ブーーっとふくれっ面をしてヒソカを睨みつけるゴン。
 予想外のむくれ方にヒソカは弱冠面食らったが、それで悪戯を止めるほどこの男はおしとやかではない。


「そんなコトないだろ♦ ホラ、ほっぺまでプニプニ♥」
 ヒソカは嬉しそうに満面の笑みを浮かべて膨れたゴンのほっぺをプニプニと楽しそうに指でつつく。
「もおおぉぉぉ! だからプニプニなんかじゃないってばー!」
 身体のあちこちを触られ『プニプニ』だとバカにされ(ているようにゴンは感じている)、機嫌を悪くしたゴンが大声で喚けば、ヒソカは常識人然として「こんな夜遅くに大声を上げるのは非常識だなぁ、ゴン♥」と笑顔で嗜める。グヌヌと歯噛みするゴン。


 その日一晩、ゴンの身体中をまさぐろうとするヒソカの手と、それを振り払うゴンという攻防が、狭いベッドの上で繰り広げられていたのだった。