「ねぇねぇ、ヒソカは一体いつの間にお化粧してるの?」


 グリードアイランド内、ソウフラビでの球技対決に向けて特訓中にゴンがヒソカを見上げてふと尋ねた言葉。


 つい先日、アカンパニーを使って水浴びの最中のヒソカに出くわした際に、ゴンは初めてヒソカの素顔を拝むことになった訳だが、それ以降ゴンはヒソカの素顔にお目にかかっていない。
 基本的に早起きのゴンが、野営地にしているアジトの近くを流れる川で朝一番に顔を洗っていると、大概ヒソカが「おはよう、ゴン♥」とゴンの背中に声を掛けてくる。
 その時には、既にヒソカは化粧を終えて髪を上げ、いつも通りの「ヒソカ」になっているのだ。


 ゴンのきょとんとした眼差しを受けて、ヒソカは「ん?」と愉しそうに目を細めて笑みを浮かべた。


「皆が起きてくる前にこっそりと♠ 影に隠れて、ネ♥」
 人差し指を唇の端に当て、いたずら笑みを浮かべて嘯くヒソカに、ゴンは目を丸くして「ホントに!?」と返す。
「ヒソカは毎日そんなに早起きしてるの!? オレだって朝は早い方なのに」
 驚きの中にもどこか「すごいや!」と言いたげな眼差しで尋ねるゴンに、ヒソカはなぜか得意げに「当然だよ♦」と答える。


「好きでもない相手に素顔を見せるなんて、そんな恥ずかしいことボクにはできないよ♠ ましてや、メイクをしている最中の姿なんて見せられるわけないだろ♦」


 フフン、と言ってのけるヒソカに、ゴンは複雑そうな顔をして「でもオレ、この間、ヒソカの素顔見ちゃったよ?」と困ったように告げると、ヒソカは満面の笑みで「キミはボクの大好きな相手なんだから問題ないだろ?」と言いながらゴンに顔を近づける。ゴンは顎を引いて顔を遠ざけ、「そ、そうなんだ・・・」とたじろいで冷や汗をかいた。


「でもね、オレ、ヨークシンで電車に乗ってるとき、電車の中でお化粧してる女の人を見たよ」
 話題を逸らすようにゴンが話を切り替えると、ヒソカは「へぇ♠」と興味深げな顔を見せた。


「キルアと一緒に電車に乗っていたんだけどね、オレたちの目の前で女の人が顔にクリーム塗ったりパタパタパターって粉はたいたり、目の上黒く塗ったりまつげ上に向けたりして、どんどん顔が変わっていくの。それで、キルアと二人で思わずジーーって見てたらすごい剣幕で睨まれて、『なんか文句あんの!?』って怒られたんだ」


 やや不満げに唇を尖らせて説明するゴンに、ヒソカは「それはそれは♠」と、半分同情するように、半分愉快そうに告げた。


「随分はしたない女性だねぇ♠ 折角キレイに変身するところを人前で全部見せてしまうなんて、ボクらの敵だよ♣」
「ボクら?」
 拗ねたように嘯くヒソカの言葉に、ゴンがきょとんと反応する。首を傾げてゴンが不思議そうな顔をしていると、ヒソカは愉しそうに告げた。


「女性の敵、という意味だよ♪」
「そっかー、そうだよねー」
 アハハ、とゴンが答えるとヒソカもニコニコと頷く。




 ・・・。
 ・・・・・・。
 ・・・・・・・・・。




「ヒソカって女の子だったの!!!??」
 たっぷり数秒掛かってゴンは勢い良く尋ねる。ヒソカはカラカラと愉しそうに「そうだよ♥」と返す。


 その笑顔を見て呆然と立ち尽くすゴン。
 あわわ、と言葉無く目を真ん丸くしてヒソカを見つめている。
 が。


「嘘だよ! だってヒソカ、ちんちんついてたじゃん!」
 ビシッと指差してゴンが叫ぶと、ヒソカは更に愉しそうにニコニコしながら「おや、バレた♣」とおどけて言った。


 完全にからかわれていることを察して、ゴンはぶーーっとむくれて「なんでそんな意味の無い嘘吐くんだよ!」と喚く。するとヒソカは「まさかこんな嘘に引っかかるなんて思わなかったんだよ♦」と笑いを堪え切れないように震えながら返す。


 もぉーーっとプンプンしながらゴンは複雑な表情でボソリと告げた。


「ヒソカは素顔より、ちんちん見られたこと恥ずかしがった方が良いと思うよ」


 真っ当で鋭いその指摘に、ヒソカは感心したように「確かにね♠」と返すが、すぐに満面の笑みを浮かべてゴンに告げた。


「でも大丈夫、ボクのペニスはゴン相手にしか使わないから♥ ゴンが相手なら見られても恥ずかしくないよ♥」


 そう言いながらゴソゴソと自身の股間をまさぐるヒソカを見て、ゴンは顔を真っ青にして「お、オレは見たくないから見せなくていいってばー! ヒソカのバカー!」と叫びながら、慌てて逃げて行ったのだった。