買い物を済ませてクロロが隠れ家に戻ると、ゴンはトランクスとタンクトップという出で立ちで、タオルで髪の毛をガシガシと拭いていた。
 どうやらクロロの留守中に、クロロの提案どおりバスルームを拝借していたようだ。
 クロロの姿に気づいたゴンは、「おかえり」の挨拶も抜きにして、「ねぇ、早く着替えちょうだい!」と嬉しそうに話しかける。


 下がった髪と下着姿のゴンをジッと眺めていたクロロは、一瞬無言で佇んでいたが、「ん、ちょっと待ってろ」と逸るゴンをやんわりと制止し、肩から提げていた大きな紙袋をダイニングチェアに下ろす。
 真っ黒な外装に金色の飾り文字、というデザインのショップバッグだった。
 がさがさと中身を取り出し、ビニールの包装を剥ぐクロロ。


 そして、バサッと広げた洋服は・・・グレーのチェックのワンピース。


 それを見たゴンは、一瞬、何が出てきてのかまったく理解できず、完全にキョトン、としてしまっていたが、ハッと我に返り、途端にぷんすかして叫ぶ。


「な、なんでまたスカートなんだよ!?」
 戸惑いと怒りが半々の叫びに対し、クロロはしれっと答える。


「これしか売ってなかった」
「うそつけーー!」
「そう怒るなよ。似合うんだから大人しく着ておけ」
「似合うとか似合わないとか、そーゆー問題じゃないの! オレは男だよ!?」
「男とか女とか、そういう問題でもないだろう。似合うヤツに着てもらった方が服も喜ぶ」
「服が喜んだって、オレは喜ばないよ!」
「そうか、じゃあ俺が喜んでやるからとりあえず着てみろ」


 うぐっと言葉に詰まったゴン。
 クロロは手にしていたワンピースをゴンに放り投げ、次から次へと購入してきたアイテムを取り出していく。
 ワンピースの中に着るカットソー、フリルつきのオーバーニーソックス、黒いレースのヘッドドレスとウィッグ。
 そして。


「あ」
 と、服や小物をがさがさと広げていたクロロが、突然声を上げた。
 何? とゴンが訊く前に、クロロはゴンに指示を出す。


「ゴン、ちょっとここに座れ」
 クロロが指し示すのはダイニングテーブル。どうやらテーブルの上に座れ、ということらしい。
「え・・・なんで・・・」
 当然、行儀も悪く必要性も感じられない行為に難色を示し、渋い表情を浮かべるゴン。
 しかし、クロロは「いいから」と言いながら、ゴンの両脇を抱えて抱き上げ、ストンとテーブルに座らせる。


「な、何すんだよー!」
 ジタバタ暴れようとするゴンに対し、クロロは手にした何かを素早くゴンの両脚に通してやる。


 それは即ち、真っ白いフリフリのかぼちゃパンツ。


 クロロはまるで赤ん坊にパンツ型のおむつを履かせるかのような格好で、ゴンの上体を自身の身体へ傾けさせるようにして、その隙にかぼちゃパンツをスッと腰まで上げてしまっていた。


「・・・よし」
 何が「よし」なのか誰も理解できそうもないが、なぜか達成感たっぷりに言い放つクロロ。ゴンは一瞬の出来事に、思わず呆然として言葉を失ってしまっている。


 そんなゴンの様子をいいことに、クロロはカットソー、ワンピースという具合に、次から次へとゴンに服を着せてやる。
 クロロの妙な迫力に圧され、ゴンは不本意ながらも為すがままだ。


 そんな具合にして、ゴンの第二の女装姿が完成されていった。
 この時クロロは、脱がすのもいいけど、着せるのも良いな、というコトに気付き、新たな扉を開こうとしていたのだった。





 ちなみに、この時ゴンがバスルームの脱衣所に脱ぎ捨てていたアリス風のドレスは、クロロが「ファンファンクロス」を用いてこっそり持ち帰ったようだが、その後、旅団員の誰かに着せたのか、それとも元旅団ナンバー4の男に高額で売り払ったのか、或いはクロロ自身がナニかに利用したのか・・・当然、誰も知る由のないことだった。