※女装注意!(今更ですが:笑)








(なに、仲良さそうに手なんか繋いでんだよ・・・!!)
 ギリッと奥歯を噛み締めながら、キルアは心の中で悔しさを込めて叫ぶ。
 ゴンとヒソカのデート(とは決して認めたくないが)の様子を、つかず離れず、『絶』を用いてこっそりストーキングしているキルアである。


 最初は不貞腐れ、むーっと不機嫌な表情をしたゴンだったが、次第に慣れて打ち解けたのか、徐々にヒソカに対して笑顔を見せるようになっていく。その様子も、キルアとしては非常に腹立たしい。


(ゴンのヤツ・・・そもそも、ヒソカから送られてきた服なんか素直に着てんじゃねーよ、しかも似合ってて可愛いし・・・)
 という自身の思考に気づいて、ひとり慌てて、ぶんぶんと首を横に振るキルア。その様子を見た通行人が、不思議な顔をしてキルアの横を通り過ぎていく。
(可愛いとか、いや、可愛いけど・・・イヤ、別に、オレは、ゴンのこと、そんな・・・!)
 ひとり、キルアが赤くなったり青くなったりしている隙に、ヒソカがゴンにアイスを買い与えていて、それをゴンは嬉しそうにお礼を言って受け取っている。


(なんでそんな笑ってんだよ、ゴン! 食い物につられてんなよ、そんな嬉しそうにしてんなって・・・ホラ、ゴン、気づけ! ヒソカの眼がヤバい! 完全にお前のコト、狙ってるって!)
 アイスに夢中になっているゴンに、キルアは必死に心の中で呼び掛けるが、残念ながらキルアの心の声は届くことなく、ゴンはヒソカに再び嬉しそうに笑顔を向けている。


 その時、ゴンの唇の端についていたストロベリーアイスを、ヒソカが顔を近づけてペロッと舐めた。
 その光景に、キルアはボカン! と爆発しそうなほどの激しい怒りを覚える。


(ふざけやがってヒソカの野郎!! 何、いきなり舐めてんだ!? ってか、ゴン! お前もそんな、ほっぺた赤くしてモジモジしてんなよ! すげー可愛・・・じゃなくて! ホラ、ヒソカの目つきがマジでヤバいって、ゴンっ・・・!)


「やあ、キルア」


 突然の背後からの声に、キルアは「うわああぁぁぁ!?」と舌の先まで出掛かった声を、なんとかかろうじて飲み込んだ。
 嫌というほど聞き覚えのある声。この声の主は。


「ふざけんなよ、クソ兄貴! いきなり何の用・・・」
 小声で叫びながら、キルアが振り返った眼前には。




 黒を貴重としたゴシックロリータの服に身を包んだイルミが佇んでいた。




「・・・・・・。」
 当然ながら、言葉を失うキルア。口をあんぐり開けて、固まってしまう。
 多少いかついが、長い黒髪と整った顔立ちの所為で妙にその格好が似合っていて、それだけに非常に気持ち悪い。


 押し黙ってしまったキルアに、イルミは淡々と語り掛ける。
「こういう格好の方が、キルの好みなのかと思って着てみたんだけど」
 どう? とイルミはキルアに見せびらかすようにクルッと回転してみせる。
 その時、砂を吐く、とはまさにこういう時の気持を表現する為にある言葉なのだとキルアは実感した。


 固まっているキルアに対して、イルミはやや上機嫌に続ける。
「ほら、ゴンもあんなに嬉しそうに着てるからさ、お前の分も買っておいてやったんだよ」
 と言いながら、イルミは手にしていた紙袋からゴンとお揃いの黒バージョンの服と、猫耳がついたケープを差し出す。


「いっしょに着ようよ、キル」


 真顔でずいっとその服を差し出してくる兄の姿に、言いようのない悲しみと遣る瀬無さと、どうしても埋められそうもない深い溝を感じたキルアは、無言で『落雷』をイルミに落として、その場を後にしたのだった。