宴の後。
執事達によってすっかり元通りに片付けられた「東塔」最上階の客室で、静かにグラスを傾けているのはヒソカとイルミ。
子供達の騒ぎ声の余韻を楽しむように、二人ともほとんど口を開かずソファに腰掛けてくつろいでいた。
ヒソカの視線は、つい先ほどまで其処に居たゴンの姿の名残を追い求めるように、ふとした瞬間に移ろい彷徨う。
そんなヒソカの姿を見て、イルミは呆れたようにハァとひとつ溜息を吐いた。
「・・・そんなに気になるなら、さっさとものにしちゃえば良かったのに」
無責任に言い放つイルミを、ジッと睨むヒソカ。
「どの口がそんなこと言うんだい? 思いっ切り人の邪魔をしたくせに♣」
恨みがましく呟くヒソカにイルミはとぼけた表情で首をかしげる。
「そうじゃなくて、もっと前にさ。時間はいくらでもあったくせに、一体何してたんだよ」
ゴンを餌にキルアを実家に連れ戻す企みにヒソカを誘ったのは、イルミなりに気を回したつもりだった。ゴンに対して悪戯程度にちょっかいは出しても、結局最後までは手を出さなかったヒソカに、イルミは軽く呆れたような気持になる。
「・・・楽しみは、後に取っておくものさ♠ それに・・・」
言葉を切って、ヒソカはカードを1枚投げ、壁にヒュッと突き刺した。カードの絵は、スペードのエース。
「手に入れてしまったら、どうせあとは飽きてしまうだけだろう?」
カードの刺さった壁を見つめながら、冷たい笑みを浮かべて言い放つヒソカ。
「手に入れるまでの駆け引きが楽しいんじゃないか♣ 飽きるまで、せいぜい楽しむとするさ♦」
冷笑し、わざとらしく突き放したような言い方をするヒソカに、イルミは「ふぅん」とたいした興味もなさそうに空返事をする。
しかし、イルミは思う。
"手に入れてしまえば、飽きてしまう"?
(本当は、今以上にのめり込むのが怖いだけなんじゃないのか?)
ヒソカの胸の内をそう読み取り、イルミは内心ほくそ笑む。
楽しみたいのは『ゲーム』だから。遊びのうちは、いくらでも余裕でいられるだろうが。
(ただ単に、本気になりたくないだけだろ)
おそらく無意識のうちに、そうやって気持にブレーキをかけている時点で既に手遅れだということに、当然本人は気づいていないのだろうけど。
(・・・素直じゃないからな、変化系ってヤツは)
自身の最愛の弟の顔を思い浮かべながら、イルミはそう理解した。
「ヒソカってさー、意外とヘタレで甲斐性ないよね」
「・・・!?」
唐突に、イルミから言われも無く投げられた言葉に変な顔をするヒソカ。イルミは良い笑顔を浮かべて言った。
「ま、オレは全面的にヒソカとゴンの事は応援するから、頑張ってよね」
「・・・♠」
真正面から応援されて、非常に複雑な気分になるヒソカ。そんなヒソカには目もくれず、イルミは思案にふける。
(さ、次は何をしようかな)
子供達が眠りに就く前にもう一騒ぎしていた頃、大人たちはこうして再び悪巧みを企むのであった。