冷たい水で嚥下した、二粒の白い錠剤。
 昼食後に飲んだ鎮痛剤は、ゴンの身体によく染み渡ってフワフワとした独特の感覚をもたらしていた。


 ギドとの戦闘から一週間。
 ゴンの怪我は順調に回復の兆しを見せていたが、さすがにまだギブスが外れることもなく、右腕を吊ったまま安静に過ごしている日々だった。


 午後1時半――――穏やかな陽光が室内を照らし、平和で静かな一時が訪れていた。
 普段であればあまり陽の光の中で眠ることのないゴンだったが、薬がよく効いている為かじわじわと眠気が押し寄せ、気がつけば瞼が落ち、ベッドの中で安らかな寝息を立てていた。
 宿泊棟から一歩外へ出れば、生きるか死ぬか、金と欲望と暴力に満ちた世界が広がっているはずの天空闘技場。
 しかし、今ゴンがウトウトと眠るこの空間は、柔らかな午後の陽射しに満たされ、そこはまるで天国のようだと形容してもいいほどのあたたかい光に包まれていた。


 そんな柔らかな午後の光の中、まどろんでいるゴンの頬に、冷たい手が触れるのをゴンは夢現に感じた。
 まどろむ意識下で、キルアだろうか? とゴンはぼんやり思う。
 この一週間、右腕の不自由な状態のゴンの世話を何かと焼いてくれていたキルアだったが、今日はズシの試合の応援に行っているはずだったが・・・


 ゴンの頬に触れた手は、そのまま掌で頬を包み、髪をかき上げ頭を撫でる。
 夢現の中、その手の優しい感触に身を任せていたが、突然訪れた唇への不思議な感触に驚いて、ゴンはパチリと目を開けた。


 視界に飛び込んできたのは、星印がペイントされた頬と赤い髪。
 ああ、なんだヒソカか、と相手を認識してから数瞬遅れて、ゴンは自身の口がヒソカの唇で塞がれている現状に気づいた。


「〜〜〜〜〜!?」


 軽いパニックに陥り、自由になる左手でヒソカの身体を押しのけようとするゴン。その様子に気づいたヒソカは、ゴンの左手をそっと掴んでからゆっくりと顔を遠ざけた。


 青ざめて、ヒソカの顔を見つめるゴン。文句でも疑問でも抗議でも、何か言葉を発したかったが上手く紡げず、口はパクパクと声なく動くのみである。
 そんなゴンの様子を見て、ヒソカはにっこりと微笑む。


「やぁ、ゴン♦ キスで目を覚ますなんて、やっぱり僕たちは運命の赤い糸で結ばれているんだね♥」
 良い笑顔でしゃあしゃあと言ってのけるヒソカに対し、ゴンはますます次の句を告げなくなる。


 ゴンが何も言わないのを良いことに、ヒソカは掴んだゴンの左手を口元に引き寄せ、手の甲にそっとキスをする。
 「ヒッ」と小さく悲鳴を上げたゴンの青ざめた表情を確かめて、ニヤリと笑んだヒソカは更に調子に乗った様子でゴンの指に舌を這わせ、絡めていく。
 蛭のように這うヒソカの舌の感触にぞぞっと鳥肌を立てたゴンは「や、やめてよっ!」と、ようやく声を発してヒソカの手を振り払った。


「い、いきなり何するんだよっ!? っていうか、何しに来たの!?」
 舐められた左手を守るように胸元で握り締めながら、顔面を蒼白にさせて叫ぶゴン。
 困惑と、恐怖に近い感情を抱いたゴンは、ヒソカと距離を取ろうと上半身を起こして後ろににじり寄ろうとするが、ヒソカは笑顔のままゴンの上腿の辺りを毛布の上から押さえて再び顔を近づけようとする。


「〜〜〜〜っ」
 ゴンは口をへの字に曲げて、なんとか遠ざかろうと上半身を逸らす。
 すると、折れた肋骨がズキンと痛み、反射的に顔をしかめ、ゴンはポスンとベッドの上に再び仰向けに横たわる格好となった。


 そんなゴンに、これは好都合とばかりに笑顔で覆い被さろうとするヒソカ。ベッドに膝を乗せ、ゴンの頭の両脇に手をついて再びキスせんばかりに顔を近づけてくる。


 ゴンが思わず顔を横に逸らすと、ヒソカはこめかみや耳にくちづけを落としてくる。そのくすぐったいような感覚にゴンはギュッと目を閉じる。
 するとヒソカは、何かに気づいた様子でスンと鼻を鳴らしてゴンの髪に顔を埋めた。


「・・・アレ? キミ、そんな腕でどうやってお風呂入ってるの?」
 仄かに香るシャンプーの匂いを感じたらしいヒソカが、ゴンの耳元で尋ねる。
 耳元の空気の振動にゾワッとしたゴンは、なんでそんなどうでもいいこと聞かれるんだろう、と疑問に思いながら、そっぽを向いたまま投げやりに答える。


「キルアに手伝ってもらってるんだよっ」
 答えた後で、「いいから早くどいてよ!」とヒソカを見上げるゴン。が、顔の近さに照れてしまい、またフイと目を逸らしてしまう。
 一方、ヒソカはゴンの言葉を受けて、イヤらしく微笑う。


「へぇ・・・イイね、それ♦ 今度お風呂入る時、僕にも手伝わせてよ♥」
「!? ハァ!? や、ヤダよ、そんなの・・・!」
 おかしなことを言い出すヒソカに抗議すべく、顔を上げてまっすぐに見上げたゴン。
 そしてまた、至近距離でバチリと目が合い、目を逸らしたくなる衝動に駆られるが、今度はグッと我慢して睨みつけたままゴンは言った。


「て言うか、本当に何しに来たんだよ!? 眠たいんだから用がないなら出てってよ!」
 苛々を含んだゴンの言葉に、ヒソカは今しがた用件を思い出したかのように「あっ、そうそう♠」と白々しく言ってのける。
 フフと笑んで、近かった顔をようやく遠ざけて、ヒソカがゴンを見下ろす。







「お説教を、しに来たんだった♣」







 そう、ヒソカが言い放った瞬間。
 今までの巫山戯た空気が嘘のようにピンと張り詰め、ヒソカは笑みを消して冷たくゴンを見下ろしていた。


 ヒソカの悪ふざけにもある種の恐怖を感じていたゴンだが、殺気と言えぬまでも冷たく張り詰めた空気を纏ったヒソカに対してもまた、本能的な恐怖心を感じて、ゴンは唇を噛み締めてゴクリと喉を鳴らす。


 ヒソカはスッとトランプのカードを一枚手に取り、ベッドに寝そべるゴンの喉元に淵を当てた。
 再び少しでもゴンが喉を鳴らせば薄皮が裂け、血が滴りそうな緊張感の中、ゴンは微動だにせずただジッとヒソカを睨めつける。


「キミ・・・僕が何の為に200階でキミ達を待っていたか、わかっているのかい?」


 ベッドの上、ゴンの身体を跨いだ格好でヒソカが冷たく見下ろす。
 ゴンの視線に刺激されたのか、固く怒張した股間をわざとゴンの太腿に押し当てながら、喉元に当てたカードを外すと、ヒソカは左手を伸ばし、不意にゴンが吊っている右上腕部を鷲掴みにした。


「・・・・・・っ!」
 零れ落ちそうになる悲鳴を噛み締めて、ゴンは無言で痛みに顔をしかめた。
 その表情を見て、ヒソカは冷たく微笑む。


「折角、洗礼を受けずに済むようにキミらを試してやったのに、負う必要のない怪我をして・・・」


 ギリ、とゴンの腕を掴む手に更に力を込めるヒソカ。
 息の止まりそうな痛みに、ゴンは歯を食い縛る。


「人の忠告を無視した、悪い子だね、ゴンは・・・♣」


 苦痛に歪むゴンの表情を見て、ヒソカは更に妖しい笑みを深くする。


 一方のゴンは、痛みに耐えながらも、内心、キルアとウイングさんにも同じようなこと言われたんだけどなぁ、と何度も繰り返される説教に辟易した気持を抱いていた。
 が、この件に関しては完全にキルアたちの言う通りで、全面的に自分に非があることをゴンは十分理解していた。


 だからこそのゴンの反応は、しかし、ヒソカにとってはまったく予想外のものだった。







「・・・ゴメン、なさい・・・」







 シュン、とまるで仔犬が耳を垂れ下げたような態度で唐突に謝罪の言葉を口にしたゴンに、ヒソカは思わず呆気に取られて、込めていた手の力を緩めた。


 ヒソカとしては、例えゴンが怪我を負おうとそれが成長に繋がるものであれば是とするのが本音である。
 『説教』と称して、キルアが離れた隙を狙ってゴンの元を訪れたのも、揶揄と悪戯程度の目的でしかなかったのだが。


(まったく、この子は・・・本当に・・・♥)


 まさか素直に謝られるなど予想もしていなかったヒソカは、そんなゴンの反応に、逆に更なる興奮を募らせる。


 一方ゴンは、一勝すれば闘えるというヒソカとの約束を反故にされてはたまったものではないと内心焦りを抱いて、弁解の言葉を並べる。
「でもっ・・・オレ、生きてるし! ヒソカを殴る腕だってちゃんとある! 怪我だってすぐ治るしっ・・・!」


 連ねた言葉は言い訳だが、その眼差しはいつもの如く挑戦的で、ヒソカは胸の内の愉悦と下半身の熱の昂ぶりを、この上なく感じていた。
 ククッと笑んでから、ヒソカは「心配しなくても大丈夫♥ 約束は約束だ、一勝できたらいつでも相手になるよ♠」と告げた。ゴンは、その言葉にホッと胸を撫で下ろす。


「ただ・・・♣」


 言葉を切り、思わせぶりな目つきでゴンを見つめるヒソカ。ゴンは、何を言われるのかとほんの少し怯えた表情で息を呑む。


 ニィ、とヒソカは妖しく笑んだ。




「悪い子には、お仕置きが必要だね・・・♥」




 言うや否や、ヒソカは毛布をめくると、ゴンの寝着のズボンに手を掛け、下着ごと剥ぎ取った。
 ゴンが疑問や抗議の声を上げる前に、ヒソカはゴンの脚を広げさせ、未だ成長途中の性器の先端を口腔に含む。


「・・・!! ヤッ・・・ヒソカっ・・・ヤダっ!!」
 突然の、あまりの出来事にゴンは動転し、咄嗟に上げた拒絶の声も上ずってしまう。
 脚を閉じようにもヒソカに両手で押さえられ、左手でヒソカの髪を掴んでもまったく抵抗にならない。


 ヒソカはゴン自身の先端に舌を這わせ、刺激を与えるように撫でていく。
 すると、口内で徐々に熱を帯び固さと質量を増していくソレを愛しく思い、ヒソカはわざと音を立てて吸った後、裏筋に舌を這わせるように陰茎にくちづけを落としていく。


「ふあっ・・・ひゃ・・・ヤ、ヤダ・・・」
 ヒソカの耳に届いたゴンの甘い声。


 少し驚いて、ゴンの性器に舌を這わせながらヒソカがその表情を伺うと、ヒソカを引き剥がすことを諦めた左手で顔を隠すようにしながら、迫り来る快感に必死に耐えるような様子で、唇を噛み締め、切なそうに眉を八の字にひそめて目をギュッと閉じている。


(そんな顔・・・するなよ・・・♥)


 ゴンの予想以上の感度と反応の良さにヒソカはますます興奮を覚え、更にイイ声を上げさせようと、もっと気持好くさせてやろうと、ゴン自身を根元まで咥え込み唇と舌で強く扱き上げる。


「ああぁっ・・・! ヤダッ、イヤ・・・ヒソカっ・・・!」
 顎を仰け反らせ、甘く切なげに声を上げるゴン。
 ギュッと閉じた目尻には涙の玉が浮かび、唇を噛み締めながらも時折甘い声と吐息が零れ落ちる。


 その全てが、ヒソカをこの上なく煽り、興奮を駆り立てる。


 ゴンの限界が近いのか、広げた太腿に痙攣を感じ、ヒソカは口を離して固く勃ち上がったゴン自身に手淫を与えた。
 手の中でゴンの熱を扱きながら、快楽に耐えるゴンの表情をよく見ようと、ヒソカは覗き込むように顔を近づける。


 噛み締めていたゴンの唇は薔薇色に染まり、今は呼吸も荒く、唇は薄く開かれている。
 そこから時折覗く舌が誘っているようにしか見えず、ヒソカは今すぐにでも喰らいつきたい衝動を飲み込む。


 唇を塞いでは、喘ぐゴンの甘い声が、聞こえない。


「ひぁ、あっ・・・アアアァァッ!!」
 程なくして、一際甘い声を上げたゴンはヒソカの掌中で達した。
 小さな身体を震わせ、閉じた目に涙を浮かべて達する姿はこの上なく愛おしさをかき立て、瞬間、思わずヒソカはその様子に見惚れてしまう。


 荒く息を吐きながら、呼吸を落ち着けようとするゴン。
 脱力する身体を、しかしヒソカは休ませることなく、薄く開いたゴンの唇に、今度は遠慮なく舌を挿し入れてくちづけた。


 噛み付くように、喰らいつくように深くくちづけ、音を立てながら何度も角度を変えて、ゴンの舌を吸い、口腔を侵す。


 傍らで、ヒソカはゴンの白濁に塗れた指を秘部へと宛がう。
 ゴンの体液を潤滑油代わりに、クチュと音を立てて中指を挿し入れた。


 ビクン、と反応するゴンの身体。永いキスから解放されようと首を巡らせるゴン。
 その様子に、ヒソカはようやく唇を離し紅潮したゴンの顔を見つめる。


 潤んだ眼と上気した頬。
 半開きの唇で苦しそうに喘ぎながら、ゴンは涙を浮かべてヒソカに懇願する。


「ヒ、ソカ・・・も、う・・・ヤダ・・・お願い・・・もう、辞め・・・」


 その言葉と表情に、理性の全てを持っていかれたヒソカは、ゴンに挿し入れていた指を2本に増やし、卑猥な音を立てて更に中を掻き混ぜる。


「ヒッ、イヤアァ・・・!」
 力なく喘ぐゴンに、ヒソカは耳元に唇を近づけて囁く。


「ゴン・・・覚えておきなよ・・・♦ そんな『お願い』は、まったくの逆効果だっていうコトと・・・♠」


 ヒソカもまた、荒く呼吸を吐きながら零した声は、普段よりも遥かに艶っぽく、耳元で囁かれたゴンは思わずギュッと目を閉じる。


 掻き混ぜていた指をゴンの中から抜き去ると、ヒソカは起き上がり、上着を脱ぎ捨て上半身を露にした。
 そして下もくつろげ、はち切れんばかりにそそり立った自身を曝け出す。


 ゴンは薄く目を開いて、ヒソカを見上げた。
 ヒソカの表情には、どんな時でも絶えたことのない余裕の色が、今はそこに無く、ゴンが初めて見る切ないような表情に思わず息を呑む。


 ヒソカはゴンの身体に再び覆い被さり、ゴンの脚の間に腰を進める。
 入り口に熱の先端を宛がい、耳元に唇を近づけて、ヒソカは先ほどの言葉の続きを告げた。


「その表情も、その声も、全部、僕以外のヤツの前では絶対に見せるなよ、ゴン・・・♦」


 低く、艶やかに囁いて、ヒソカは一気にゴンの奥へと腰を進めた。


「痛ぁっ・・・! ヤダッ、ヒソカぁ・・・!!」


 強引に侵入された痛みに、ゴンは喉の奥から悲鳴を上げる。
 左手でヒソカの腕を掴み、爪を立てるように強く握り締める。


 しかし、ヒソカはゴンの内部の熱と締め付けの強さに恍惚を覚え、ゴンの腰を両手で掴んで激しく打ち付ける。


「イヤアァァァッ!」
 奥を強く抉る度に迸るゴンの悲鳴。


 貫かれた痛みだけでなく、元々負っていた怪我がもたらす痛みも相俟って、ゴンは涙を零して悲鳴を上げるが、ヒソカにはそれを気遣ってやる余裕など無いほど、ゴンの内部の快楽に溺れて激しく腰を打ち付ける。


 ギリギリまで引き抜いて、奥を激しく突く動きを何度も繰り返し、涙に濡れたゴンの表情を見下ろし、悲鳴混じりの喘ぎ声を聞くヒソカは、今まで味わったことのないような快楽と感情に飲まれていく。




 至上の快感と、独占欲と、征服欲と、今まで決して満たされたことの無かった『何か』。
 心に在った空洞が、ゴンの中で貪る快楽によって、埋められていくような気がして――――




 ゴンの小さな身体を抱き締め、ドクンとひとつ大きく脈打ち、ヒソカはゴンの中で達した。




 そのまましばらく、ヒソカはゴンの身体を抱き締めたまま絶頂後の余韻を味わい、肩で大きく息をすると、ゴンの額や涙に濡れた頬に優しくくちづける。
 その接吻の優しさと、抱き締める腕の温かさと、午後の陽射しの柔らかさに、ゴンは怪我の痛みも忘れて再びウトウトとし始めていた。


 やがてヒソカの腕の中で寝息を立て始めたゴン。
 ヒソカはその安らかな寝顔を眺めて、頭を撫でてやりながら、もう一度、優しく甘くゴンの唇にキスを落とした。



















 その日の夜。


「ゴンー? 風呂入ろうぜー」
 と言いながらゴンの部屋を訪れたキルアは、ベッドの上で甚だ具合が悪そうに佇んでいるゴンの様子を見てギョッとする。


「なっ・・・お前・・・どうしたんだよっ? すげー、顔色真っ青だぞ・・・?」
 心配そうにゴンを覗き込むキルアの顔を見上げて、ゴンは「アハハ」と曖昧に苦笑することしかできない。


「キルア、ゴメン・・・オレ、今日お風呂は良いや」
 ゴンは困った様子で、遠慮がちにキルアに告げた。明らかに体調の悪そうなゴンを見て、キルアは「それは良いけど・・・お前、大丈夫か?」と心配して声を掛ける。そんなキルアの心配を、ゴンは罪悪感と共に受け止める。


 結局、行為の後、一時間ほどで目を覚ましたゴンだったが、怪我人であるゴンの身体への負担は当然大きく、すぐには起き上がれない状態だった。
 怪我人をそんな目に遭わせた張本人は、飄々として「それじゃあ、せめてもの罪滅ぼしに♦」と、半ば強引にゴンを風呂に入れてやったのは良いのだが(否、ゴンとしては、まったくありがたくない申し出ではあったのだが)、風呂の中で胸や腹や太腿など、際どい部分にヒソカは幾箇所もキスを落とし、痕を残していった。


(・・・こんなのつけられたら、オレ、キルアにお風呂入るの手伝ってもらえないじゃん・・・!)
 そんなゴンの嘆きを他所に、ヒソカは「また、明日お風呂に入るときは連絡しなよ♣ 手伝ってあげるから♥」と言い残して、ゴンの部屋を後にしたのだった。


 諸々、今日の出来事を思い出して、ゴンはひとつ、大きく溜息を吐く。


「キルア・・・オレ、もう寝るね・・・」
 力なく言うゴンに、キルアは心底心配そうに「お、おう・・・ホントに大丈夫か? 何かあったらすぐ報せろよ」と言い置いて、名残惜しそうにゴンの部屋を去っていく。


 ひとりになって、ゴンはもう一度、ガックリと項垂れて溜息を吐いた。




(まったく・・・ヒソカって・・・酷いや・・・ズルイや・・・)




 ゴンの身体に残された痕と痛み。
 それとはまた別の、胸の奥の甘い痛み。




 紛らわすように、ゴンは白い錠剤を二粒、冷たい水で流し込んだ。